気象レーダー
局所的集中豪雨の発生頻度は最近 20 年で有意に増加傾向にあり,被害も甚大なものとなっている .
この深刻な気象現象の原因は積乱雲であり,高さが10 キロメートルを超えることもある.一方で,発生から消滅までは10分から30分程度と,短時間で状態が大きく移り変わる現象である.
従来のドップラー気象レーダでは,特定の約 10 から 20 の仰角方向にのみペンシルビームを送信し,対象仰角の気象状態を観測する.全方位を観測するためには,アンテナの向きを変えながら観測仰角数と同じ回数アンテナを回転させる必要があり,5 分から 10 分程度の時間がかかってしまう .
したがって,局所的集中豪雨を観測するには,時間・空間分解能が不十分であった.
そのため, 時間・空間分解能向上のために フェーズドアレイ技術とビームフォーミング技術を併用する気象レーダ (Phased Array Weather Radar: PAWR) が開発された.
フェーズドアレイ技術によりアンテナの向きを変えることなく瞬時にビームの送信方向を変えることができ,上空の散乱信号をまとめて一度に受信する.そして,受信した混合信号からビームフォーミング技術により各仰角の散乱信号を抽出する.これによりアンテナを 1 回転させるだけで全天の観測が可能となり,観測時間が 10 秒から 30 秒程度と大幅に短縮された.
北原 大地, 森川 侑奈, 平林 晃, 吉川 栄一, 菊池 博史, 牛尾 知雄,
“フェーズドアレイレーダにおける隣接仰角間の類似性を利用した気象パラメータ推定,”
第32回回路とシステムワークショップ, 東京, Aug. 2019, pp. 129–134.
[Radar Signal Processing, Nonconvex Optimization] pdf (preprint)
D. Kitahara, H. Kuroda, A. Hirabayashi, E. Yoshikawa, H. Kikuchi, and T. Ushio,
“Nonlinear beamforming based on group-sparsities of periodograms for phased array weather radar,”
IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, vol. 60, 19 pages, Mar. 2022.
[Signal Processing Theory and Methods, Radar Signal Processing, Convex Optimization] official access / pdf (preprint)
滝本 健人, 北原 大地, 平林 晃, 牛尾 知雄,
“フェーズドアレイ気象レーダのための時空間的特徴を利用した高精度ビームフォーミング,”
2020年電子情報通信学会総合大会, 東広島, Mar. 2020, p. 73.
[Radar Signal Processing, Convex Optimization] pdf (preprint)